(ネタバレ上等) ファラオの墓鑑賞記(主にまりあ様版)
アンケスエン役まりあ様のおすがた(検索でひろってお借りしてます)
そんなわけで、6/5(火)に演劇女子部の「ファラオの墓~蛇王・スネフェル~」のマチネ公演を見てきました。
語るまでもなく前年の「ファラオの墓」の再演という位置付けの作品になりますが、スネフェル役の石田亜佑美以外のメインキャストと言えるポジションをはじめかなりの配役がキャスト変更になっています。
主役のスネフェルが石田さんなのは先述どおり。
そのライバル役であるサリオキス王子役に抜擢されたのがまりあ様の盟友加賀楓。
そして、サリオキス王子の妹、つまり王女役であるナイルキア役には前年はサリオキス役を演じた小田さくら。
そして、スネフェルが率いるウルジナ国の実力者であるケス大臣の娘。であり、スネフェルの婚約者であるアンケスエン姫役が前年の譜久村さんからまりあ様へと変更されました。
変更というとイメージ悪いのですが、そうではなくて必要性があっての変更だということを強調しておきたいと思います。
そんな譜久村聖は、今年はトキ役へとシフト。物語序盤でサリオキスを救出した人々の中にいた彼女は、サリオキスの祖国エステーリアから奴隷として売られてきた一人であり、元侍女でもあった存在であり、この物語のストーリーテラーを務めます。
けして目立つ役ではないのですが、力量ある譜久村さんをここに据えたのは慧眼といえましょう。
さて、配役変更といえば昨年のナイルキア役からイザイ役への変更があったのが野中美希。すでに漏れているように、彼女のイザイ役は好評です。
ご存知のとおり、活発なイメージの強い野中さんなので弱弱しさを演じるナイル役から一転、この配役は見事でしたね。
以下、アリ役に森戸、パビ役に羽賀、ネルラ訳に飯窪、ルー役に横山。
ケス大臣の手足となる悪の華、マリタ役に生田、ジク役にまーちゃん。
メネプ神官役に清水佐紀、ケス宰相(大臣)役に扇さん、メリエト皇太后役に汐月さん。
そして、残念ながら卒業発表した尾形の配役サライ役は北林さんがコンバート。
アンサンブルは前田こころさん他(省略の仕方が恣意的)
昨年どなたかが作ってくださったものをさっくりというか雑に
改変した相関図はっておきます。←
前年との大きな違いはスネフェルが主役になったことなわけですが、スネフェルがああいう性格になってしまった要因の一つである「母の愛」を受けれなかったことを語るうえで大切なメリエト皇太后役ができたこととアリの母親であるトキ役が据えられたことが昨年の内容よりもより深みや理解しやすさに大きな役割を果たしておりました。
さてネタバレ上等とは言ってみましたがすでに
こちらなどで物語の要諦(といいますかクライマックス)
が見れますので思ったところをつらつらと。
まず、私は山崎直樹の犬を自称するくらい彼のことが大好きなのですが、
劇ハロとか演劇女子部が
大嫌い
なんですけど、今作品は非常に素晴らしいといえます。演劇女子部の問題を簡単に書きますが、
- 上演時間が短すぎる
- その割にFOCUSするキャラクターが多すぎて話がちらかる
- なので話の筋が雑となり、原作を読むとか事前情報が必要
- さらに拝金主義で土日は3公演とかカンパニーに負担がかかる
- しかもその間にイベントとか余計なことをしやがる
このあたりが不満でして、こいつ本気でミュージカル好きとか言ってるんじゃねえよ?と思うくらいなんですけど、
1~3に関してはスネフェルを主軸においた物語としたことで、前年に情報を入手していますから問題解決しています。また、主にスタッフ側の負担を考慮したらしいですが、土日3公演はやめて客入りに多少目を瞑っても4を解決しました。
5に関しては尾形卒業があるため今回はやむをえませんし、尾形としても演技に費やす時間と違い学業に差支えのでにくい時間帯に多くイベントをすることでメンバーへの負担は軽減されていると思いますのでとてもよく気を配っていると思います。
今回の作品で唸らされた一つがまりあ様こと牧野真莉愛のアンケスエン役への抜擢
だったんですけど、正直見る前は相撲でいうところの家賃が高い状態だと思っていたんです。
おととしの「続・11人いる」のEAST編でのオナ役、WEST編でのチュチュ役で考えても主に歌唱が理由にしてもチュチュ役の方が評判よかったですし、EAST編ではオナ役を奇しくも今回アンケスエン役を引き継ぐ形となった譜久村さんとのダブルキャストで評価されていたわけですから。
そんなまりあ様ではありますが、ここまでのツイッターなどでの評判は非常に微妙なものが少なくない一方で、ファンを中心として歌唱力の向上や演技力の向上も語られることが少なくありません。
この差を考えるともちろん耳を傾けるべきものも少なくないのですが、
牧野真莉愛=まりあんLOVEりんというイメージが浸透しすぎているのかもしれないということもあるのかなぁと。
道重さゆみや松浦亜弥が舞台ではほとんど活躍しなかった背景というのは
「さゆ」「あやや」というイメージが強烈でその配役のイメージをも消し去ってしまうというのが個人的考察なのですが、板の上というのは当たり前ですが仮面をかぶることが必須ですので、それが普段から注意深く見ている人にはともかく、わりとあっさりと眺めている人にはそのあたりで活舌が悪い、歌がどうのってイメージとあいまって増幅されて見られてしまうという枷のようなものだと。
この点について牧野真莉愛がどういうふうに今後成長するのか、それこそ生田さんみたいに3年くらい舞台から遠ざかるのか、ある程度の事務所側の判断というものを見届けたいと思っております。
さて、オーディエンス側の評価は別として、今回のアンケスエン役が譜久村聖よりも圧倒的に良かったと自分が思うのは、スネフェルという未成熟な心を持つ若き王の婚約者という存在感として人を愛した経験のない同じく弱い存在のあわせ鏡としてその弱さを含めた中にある慈愛や芯の強さを表現させるときに、すでに確立されている譜久村よりもまだまだ発展途上にある牧野を選択したスタッフサイドは賢明としか思えません。
結果としてスネフェルを生かすためにある配役の一つですのでこれはよく考えた
判断だと思います。
いわば煽り番組であるBS-TBSで放送された「ファラオの墓ナビ」でもまりあ様は追い込まれている姿が描写されておりましたが、役を掴むまでの間は相当苦労したと思います。
そういう葛藤や苦難を乗り越えて演じるアンケスエン役は幕があいてから4日目、
良い感じで発露されておりました。
台詞を噛んだ、活舌がよくない、歌唱がどうだ、ということに拘泥するのは間違えではないのですが、物語の本筋というものを理解するうえで些末なものだということをご理解されたいなぁと思ってはいます。
舞台は動き出したら役者のものですので、その役になりきろうという精神は我々は犯してはならないと思うのですよ。
まぁ台詞忘れたって続きますからね。
蛇王スネフェルというエジプト古代史に咲いた徒花の物語は、第一幕第一場での無益な殺戮シーン、母親との確執を経て、ナイルキア(ナイル)との出会いにより少しずつ
人としての感情を得た上で、愛するがゆえに愛する人を殺す羽目となり、そして
最後をむかえるわけですが、前年に描かれたただの悪役よりもはるかに魅力的な悪役として描かれております。
不幸にも最後を迎えますが、長く確執のあった母親の愛を得て、さらに忌の際には
スネフェルを愛した3人の女性が一つの舞台上でフレームに収まる場面は感動せずにはいられませんでした。
アンケスエン牧野の良かった声として、気品がある、というのも少なくないと思いますが、背筋が伸びていてなおかつ長身のまりあ様は今作品のアンケスエンにはより適任だったと思います。
かつて高橋愛がはじめて宝塚と共演した際に、舞台がはじまったら座らない(衣装にしわがよるのを防ぐため)ということを学んだのと階段を降りるときは足元を見ないというのを実践していたのは有名な話なのですが、宝塚の女優さんというのは皆さん一様に背筋がしっかり伸びていますよね。見栄えという意味ではまりあ様の高身長+背筋の良さというのはかかせませんでした。
どなたかがツイッターでメリエト皇太后とスネフェルの身長差に目を配っててうれしく思いましたが、あの身長差で親子としての対比を暗示できるという演出意図は実のところまりあ様にもあったわけです。
まず、サリオキスとの身長差がないこと。さらにメリエト皇太后との身長差も少ないこと。一方でナイルキアとの身長差は、頭をなでるシーンでその慈愛が際立ったように思います。サリオキスとの恋仲は描かれることはなかったですけれども、大切ですし、メリエト皇太后というのはアンケスエンにはおそらく理想の人という立場だったため、美しい一方で強い女性として描くには重なる部分があってよかったと思います。
スネフェルに対して、自分がウルジナ国皇太后という立場を明確にしたように、サリオキスに対してウルジナ王の婚約者という立場を明確にした場面はこの作品の中ではメインストリームではありませんが、女の意地みたいなものが出ていて唸らされました。
1年近い準備期間を経て作りこんだ作品ですのでやはり良かったのですが、あえて苦言を述べるのであれば
サリオキスとアンケスエンの恋仲をもっと描いてほしかった!
今作で死ぬ運命を免れたアンケスエンということでそれはよかったのですが、サリオキスにとってのアンケスエンを描く場面が少なかったため、アンケスエン覚悟の場面がそこまで来るものではなかったということですかね。
せっかく3回まわしとか馬鹿なことをやめたのであと15分上演時間が長ければ書いたと思いますのでそこが残念でした。
でも、サリオキスとアンケスエンの恋仲なりアンケスエン死亡シーンを排除したことが作品のテンポの良さやスネフェルの描きこみに影響あったと思うので仕方ないか。
そんなわけで、サリオキスとアンケスエンのキスシーンはであったときの一回こっきりなわけですけど、女優牧野真莉愛にもとめたい。
唇を指で隠さずに、
本当にキスをしろ!
怒られてもいいので千秋楽前あたりで是非!
まりかえでぃー派を悶絶させるべき!
ということでご一考を。(しません!)
また見にいきたいなぁ。